すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

株式会社土用亭

お客様のため、地域の発展のため、 笑顔のたえない店づくりを目指します

取締役

福田 桐子

家族で育んだ店の 歴史を大切に思う

店の歴史は古く、まもなく創業50年になろうかというところです。鹿沼市の銀座通りの貸店で、祖父が始めた小さな食堂が最初でした。ラーメンやトンカツと食堂らしく何でもメニューにありました。私が小さい頃、父は新聞配達のアルバイトもしていました。 

転機は30年ほど前です。釣りが趣味だった父が川で天然のうなぎを釣り上げ、料理して出したところ、これがなかなか好評で。それから焼き方も勉強し、タレも研究を重ねて本格的にうなぎを提供するようになったのです。現在地に移転したのは平成2年。鹿沼インター近くの雑木林を購入し、父が時間を作ってはひとりで伐採し、何ケ月もかけて開墾しました。『土用亭』の名前もここからです。両親の苦労した姿を見ていますから、店を大切に思う気持ちは人一倍強かったし、やはり客商売が好きというのが根底にあったのでしょう。二人姉妹でしたが、どちらかが店を継ぐという思いはいつも心のどこかにありました。現在は父と夫が調理場を守り、私が女将として全体を取り仕切っています。

ピンチはチャンス 家族で逆境を乗り切る

移転後は、ゴルフ帰りのお客様や地域の常連さんも増えて営業は順調に伸びてきました。うちのうなぎが大好きだったので、亡くなった時にご家族が棺に入れてくださったという話を聞いたときは、商売を超えた心のつながりを感じたものです。平成20年に大規模な改装を行い、テーブル席をメインに、バリアフリーを取り入れています。家族連れを意識した小上がりや個室など、さまざまな用途に対応できる作りになっています。80人を収容できる宴会場を増築し、団体のお客様も受け入れ可能になりました

しかし、この5、6年はうなぎの稚魚が減少して価格が高騰しています。現在は愛知県の一色産うなぎを仕入れていますが、仕入れ価格は創業時から8倍になったと聞きます。利益が出ない日々が何年も続き、悩んだ末、ピンチはチャンスと前向きに考え思い切った策を実行しました。まずは、『うなぎ』の大きな看板を通り沿いに立て、駐車場も広げました。うなぎをメインにしたわかりやすいメニューと、ホームページも立ち上げました。結果的に経営は劇的に好転したのです。看板を見てうなぎ屋だと初めて知ったというお客様や、大型バスの団体予約も目に見えて増えてきました。うなぎ屋の敷居が低くなったこと、うなぎ以外のメニューも豊富なことで家族連れも入りやすくなったようです。くつろいだ暖かい雰囲気を大切にしたいので、ホールスタッフの教育にも力を入れています。スタッフの後姿やちょっとしたしぐさなどは特に注意していますね。

確信があったわけではありませんが、子どもの頃から客商売に身近に接してきた体験と、先輩経営者の皆様のアドバイスがいい方向に導いてくれたのだと思います。ともあれ、苦しい中で私のやりたいようにさせてくれた家族の、団結力なしには乗り切れなかったでしょう。

愛される店づくりで 地域発展に寄与したい

最近は、地域の経営者や若い農業者のさまざまな集まりに参加させていただいています。地域活性化はどこでも話題になりますが、地域の発展にも役立てる店づくりをといつも考えています。とんかつには鹿沼のブランド豚『さつきポーク』を使用していますが、とても好評ですね。地の素材をメニューに取り入れるなど、できることから少しずつやっています。子どもの頃家族旅行で行った山形でいただいた『こんにゃく懐石』が印象に残っていて、鹿沼のこんにゃくやそばを活用できたらいいですね。

小さな店から始め、土地を買って大きくできたのは家族で団結してきたからです。ゆとりができた今は、お客様と地域のため、笑顔のたえない店づくりを目指していきたいと思います。

profile

鹿沼市出身。女将として両親、夫と店を盛り立てる。 息子は大学生と高校生。趣味は器と天然石のアクセ サリー作り。休日にはひとりで益子まで作陶にでか ける。豆や淹れ方に凝ったコーヒーが大好き。人生 の生き方としてターシャ・テューダーさんが大好き で何度も繰り返し愛読してしまうほど。