すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

増渕倉庫株式会社 有限会社 増渕住総

時代の変化に臆せず守り続けてきた歴史 その伝統と実績を、後世へと受け継いでいきたい

代表取締役

増渕 眞智子

逆境を乗り越えるため 新たな道へ

 母が創業した増渕倉庫株式会社の三代目として、経営に携わるようになってから32年の月日が経ちました。家業を継ぐ前は東京で服飾デザインの仕事をしていました。一人っ子ということもあったので、会社を引き継ぐため地元である宇都宮へと戻り、両親の側で経営について一から学びました。

増渕倉庫株式会社では、法人向けの大型倉庫や店舗の不動産賃貸管理を行っています。企業向けの施設は最低でも10年〜20年という長いお付き合いになるので、どの案件でも必ず把握し、契約の際も立ち会うようにしています。また平成3年に設立した有限会社 増渕住総では、個人向けのアパート・マンションを中心に、ギャラリーや教室などの物件管理業を行っています。

 両親から受け継いで順調のように思えた会社経営でしたが、平成20年のリーマンショックで大きな転機を迎えました。事業所の撤退や倒産していく会社も多く、当社でも大きな損失が出ましたが〝これからは福祉の時代がくる〟と確信し、それを機に社会福祉の方に目を向けるようになりました。そしてすぐに福祉・医療系企業のための設備づくりに力を入れ始めたのです。まだ使える既存の倉庫を壊して建て直すこともあり、それはとても勇気のいることでしたが、いち早く方向転換したことが功を奏し、現在では需要は着実に伸びてきています。時代を見極め、何を求められているのかを常に考えることが経営者の役目だと感じています。

心に寄り添いながら 要望に応えていく

会社を経営していく中で一番大切なことは、お客様とのコミュニケーションですね。特に大型物件では、契約するまでの期間がとても重要です。お客様が何を望んでいるのか、私たちは何を提供できるのか、入念に話し合いを進めていきます。当社では、設備はもちろん、家賃の交渉においても一切妥協はしません。価格を下げない分、お客様にとってさらにプラスになるような設備の提案をしたり、ワンランク上の上質な材料を使うことで付加価値を付けていくのが当社のこだわりです。男性が気付かない細かい部分に配慮していくことが、女性経営者だからこそできるサービスだと感じています。心に寄り添いながら利用する方の立場になって提案をすることで、信頼関係も生まれてきます。

 お客様の会社が成長して大きくなり、さらに事業を拡大していくために事務所を出て行かれる姿を拝見する時は本当に嬉しいですね。また、40年という長い期間借りてくださった古い建物を解体した時は、お客様の方から「お世話になりました」と声を掛けてくださり感慨深いものがありました。私たちは陰ながらの立場ではありますが、お客様が築いた歴史を共に感じられる、とてもやりがいのある仕事だと感じています。これからも、働く人にとって快適な設備を提供していきたいと考えています。

茶道・華道の精神で 邁進してきた日々

40年以上続けている茶道・華道は、人生で欠かせないものになっています。茶道においては「心に寄り添い、共に心を磨く、和、敬、清、寂の精神」を学び、華道では「草木の命を尊び、花と語らい、命を生ける心と技」の精神を学びました。これは茶道・華道のみならず、仕事をする上でもいえることですね。お客様の意思を尊重し、寄り添いながらよりよいものを提供していく。その精神は、私の生き方の指標にもなっています。

 〝どんな毎日も最高にいい日〟という意味の「日々是好日」という言葉も心の支えになっています。誰しも、一見楽しそうに見える人生の裏側にはさまざまな努力があり、それを乗り越えたからこそ言える言葉なのだと感じています。何気ない一日でも、その一瞬一瞬を大事にしていきたいです。人生の中で苦しい修行と思えるような出来事はありますが、乗り越えてしまえば実はなんてことのないことに気づきます。「今日もいい日だわ」と清々しく思えるような毎日にしていきたいですね。

 将来は、地域のためになるような会社や施設、保育園なども増やしていきたいと考えています。さらに地域の皆さんに貢献できるような場をつくっていきたいですね。そして私が先代から受け継いできたように、今自分ができることを全うし、後世へとバトンを繋いでいきたいです。

profile

宇都宮市出身。昭和53 年に文化服装学院を卒業。 昭和61 年に増渕倉庫株式会社の取締役に就任。平 成3 年、有限会社 増渕住総を設立し代表取締役を 務める。平成26 年に宇都宮市倫理法人会で普及拡 大委員長、平成16 年から現在まで宇都宮市民生委 員児童委員を務めるなど活動は多岐に渡る。