有限会社とちぎ園芸
〝花と緑の散歩道〟をキャッチフレーズに気軽に寄れる、居心地の良いお店でありたい
取締役
富久田 三千代
地元の人が楽しめるお店でギャザリング教室も開催
「とちぎ園芸」のキャッチフレーズは〝花と緑の散歩道〟です。散歩がてら気軽に来てもらうイメージですね。園芸相談に来る方や、「今日は偵察」と言って話だけをして帰るような方もたくさんいらっしゃいます。
当社は、私の父が花の苗や花木を生産するところからスタートしました。店舗ができたのは昭和57年。宇都宮市幸町に20年近くお店があり、鶴田町に移転してから20年ほど経つので、計40年近く営業しております。
お店で扱っているのは花の苗や鉢花、切り花、ガーデングッズなどです。女の人って、食べ物も色々食べたいじゃないですか。同じように色々見てもらいたい。だから、お店には花や小物をたくさん揃えています。苗の種類はパンジーとビオラだけで何百種類もありますし、花が引き立つ小物やオブジェなども置いています。
ここ何年かは、自社農場にも力を入れていますね。自社農場のメリットは、毎日のように新鮮な花を持って来られることと、その年の流行をすぐ取り入れられることです。あとは、お客様へのサービスとして〝花旅〟バスツアーを行っています。
きて、店舗をもたずにネット販売している方もいます。でも、ここは皆さんが足を運んでくれるお店なので、地元の人に楽しんでもらいたいと思っています。
また一年半くらい前から、ギャザリング教室を開いています。ギャザリングは青木英郎先生が考案した、寄せ植えの新しい技法。数株の植物を花束のように束ねて植えるものです。寄せ植えは植物が成長したらなじんできますが、ギャザリングは植えた時が完成形なので、作った時の達成感があります。切り花のように見えるのに、根っこが付いていて2〜3カ月もつのも魅力ですね。
根を小さくするギャザリングは、園芸の世界ではタブーとされることをしているんですよ。根っこの土を落とすなんてかわいそうという考えだったんですね、昔は。それを青木先生がこんなにも美しい世界があると伝え続けていった結果、雑誌に取り上げられるようになった時にたまたま見たんです。後にそれがギャザリングだと知り「私もやりたい」と群馬や埼玉の教室まで通って、認定証をもらいました。青木先生の認定を受けているのは、栃木県で当社だけです。
親族の言葉で園芸の道へ
ので園芸の道もいいかなという程度で、ここで働こうとは考えていませんでした。親族に「園芸に興味があるなら、こんな学校もあるよ」と言われて見に行ったら、日本では珍しい全寮制の短大で面白いと思ったんです。それがきっかけですね。卒業後は都内の造園会社に就職し、設計室で公園などを造っていました。5年ほど働いた頃、当社の店舗が移転する時に人手が足りないということで、こちらに戻ってきた感じです。
前は規模の大きな仕事をしていたので、今の仕事にはとまどいがありましたね。父が得意なのは寄せ植えですが、自分で作ってみたらこのサイズに色々植えるのかと…。やっていくうちに大きくても小さくても、バランスや見え方は同じようなものだと思えるようになりました。時間はかかりましたけれど。
〝花育〟を広めながらトータルな庭造りを目指す
花のある生活って、小さい頃から花にふれていたら当たり前の生活なんです。昔は庭に花が咲いたら学校に持って行きましたよね。今は花の委員や係の子以外、花を知らない感じです。約20年前の園芸ブームが落ち着いてから、花離れと言われるようになりました。心配なのは花離れをすると、花をつくる生産者がいなくなってしまうこと。そこで食育ならぬ〝花育〟のために、父が幼稚園などで〝花咲かじいじ〟と称して花の魅力を伝えたり、私が中学校などで学生と一緒に花を植えたりしています。
近い将来は、花を植えやすい庭や年齢を重ねた方のリガーデン(庭のリフォーム)など、トータルで庭を造れたらと思っています。そういった提案や居心地の良いお店づくりを通して、地元の人から「あの会社に入ってみたい」「あの店員さん楽しそう」と思われるような会社にしていきたいですね。