すみれ会　栃木県女性経営者100人

両親から引き継いだ事業を 時代に合った方法で守っていく

井上総合印刷は父と母が２人で始めた会社で、平成28年10月10日で満50年を迎えました。私は物心ついた時から何のためらいもなく会社を継ぐことを考え育ってきました。短大では印刷技術について専門的に学び、平成２年に新卒で入社してからは、制作・営業・経理・総務など20年以上にわたりさまざまな業務を経験して参りました。代表取締役社長に就任したのは平成26年８月。まだまだ勉強の身です。

当社は印刷に関する業務全般を行い、名刺や封筒、ハガキといった軽印刷から、チラシや新聞など、輪転機を使った百万部単位の大量印刷までさまざまなご要望に対応しています。さらに企画制作部門を設け、さまざまな企画提案とサービスが可能です。印刷関連の業務はほとんど自社でまかなえる設備やヒトを揃えています。最近ではダイレクトメールの発送を代行するサービスなども担い、顧客の先にあるエンドユーザーへ向けた発信業務も手がけています。

平成28年２月からは新事業として、電子書籍ポータルサイト『栃木イーブックス』を立ち上げ、サイト内で県内自治体の広報誌が閲覧できるという新たな試みを行っています。これは宮崎県が起点の組織事業で、各県において印刷会社１社がサイトを運営しています。全国で意見交換をしながら、最終的には47都道府県で展開し、各々の自治体が有意義なPR活動の場として利用できることを目標にしています。県内での認知はこれからですが、非常に喜ばれているサービスですので、ゆくゆくは一般企業などにも展開していきたいと考えています。今は通信技術の発達により紙媒体の存続が危ぶまれるとき。印刷の仕事は積極的に〝売り込む〟時代になりました。その中で〝印刷物〟を軸とし、WEBなどの最新ツールも活用しながら、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。

しなやかさを持ち、身近な 言葉を感じることが気分転換

私には〝これをしたら元気になる〟といった回復法がありません。社長に就任してから辛いこともたくさん経験しましたが、その度に「辛さの分だけ楽しいことがある」とポジティブに考え、辛さをも楽しむべく乗り越えて参りました。現に一つひとつちゃんと問題は解決します。何とかなるものです。

それに、励ましのメッセージは日常にあふれています。例えば、ふと目にしたポスターの一文に癒されたり、インターネットを検索していて関係のないページにある言葉にハッとさせられたり…、言葉を扱う仕事をしているからなのかもしれませんが、何気なく目にしたものから置かれた状況に適した言葉を自然と見つけ、それらに元気をもらうことが多いように思います。

コミュニケーションにおいては、全国の同業者や異業種の方々など、とにかくいろいろな人たちと話をすることが大切です。現代は仕事や場所などに垣根はなく、他県で起こることは、きっといつかは栃木県でも起こることと考えています。常にアンテナを張ってさまざまな言葉や情報に触れることで、新たなチャンスの波にも乗れると信じています。

夢は長く必要とされる会社 地元へさらなる恩返しもしたい

創業から50年という長い間存続できたのは、ほかならぬ地元・栃木の皆様の支えのおかげです。そのため、私はこれからも周りの皆様に感謝しながら、100年以上愛され続ける会社を作っていきたいと思っています。社長になって最初に頭をよぎったのは、後継者のこと。何年先になるかは分かりませんが、私が何年もかけて育てていただいたように、私の後継者も時間をかけて育てていかなければならないと感じています。また、時代は目まぐるしく変わりますので、未来に印刷という業態が残っているかどうかは分かりませんが、万が一の際には、業態を変えてでも残していきたい、そう強く思います。

地元への貢献という点では、内では他の印刷会社にはない設備を多く持っていることを強みに、同業他社との協力関係も築いていきたいと考えています。さらに、県外にシェアを拡大して県内にたくさんの仕事を生み出し、栃木により多くの雇用の場を提供していきたいとも思います。今は今日・明日をどうするかという半歩先までしか見られていませんが、少しずつ遠い未来に目を向ける時間を設けて、これからも多くの人に役立てる環境を作っていきたいと思います。