特定非営利活動法人 とちぎユースワークカレッジ
『二度と孤立を選ばない』強い心を育てたい あきらめさせない励ましで若者たちを支援
理事長
横松 陽子
独自の体験プログラムで 社会から孤立する若者を救う
現在、働いていない、学校に行かない若者が全国で60万人いると言われています。社会的にニート(Not in Education,Employment or Training/ 就学、就労、職業訓練のいずれも行っていないという意味)と呼ばれるこの若者たちは、人間関係のつまづきなどから孤立し、社会に出ていくことが困難になってしまった人たちです。彼、彼女らは、就業経験がある人、小学校から不登校などさまざまな背景を抱えており、貧困や病気が隠れている場合もあります。
『とちぎユースワークカレッジ』(以下カレッジ)は、こうした若者たちが社会に出る際に、人に慣れる場を提供する塾です。一般的にニートの支援というと相談か合宿がほとんどですが、カレッジでは半年間を区切りとし、週3回学校のように通いながら、体験プログラムを学んでいきます。受講期間はさまざまですが就業実績は約7割、しかし単に就職だけを目的とするのではなく、人との係わり合いを経験しなおすことで、人は人の中でしか変われないということ、人の中にいなければならないということを心に刻んでほしいのです。二度と孤立をしないことで、今後の人生でさまざまなことに出会っても乗り越えられる人を育てたいと思っています。
励まし続けること それが私の支援
授業は受講生のその時の性質に合わせてプログラムを構成しています。50ほどあるプログラムのうち、特徴的なひとつが『ヤングスポーツフェスティバル』です。他の支援グループとともに毎回100人規模で行うのですが、運動会、あるいは球技大会を企画から運営、司会や競技解説、採点などをすべて受講生だけで行なうものです。これはメンバー同士の関係が深まる、できないと思ったことも、チームで知恵と力を出し合えば問題が解決すると実感することを目的にしています。外部との折衝も含まれるのですが、中には電話をかけることも怖くてできない、という子もいます。皆で助け合い、できないことをひとつずつこなしていくことは、自信につながっていくようです。
さらに期末には『40kmウォーク』を行います。宇都宮城址公園を出発し、日光東照宮まで歩丸一日かけて歩くことをとおして、ひとりではできないことも、仲間とともにやれば自分の限界を越えられることを学びます。半年間固定のメンバーで励ましあい、お互いのペースを守りながらいっしょに進んでいると感じてもらうことが重要です。私はいつも、全員が完歩できるよう寄り添って励まし続けます。実現させるために、励まし続けてあきらめさせない。それがまさに、私の支援なのです。
助成金だけに頼らない 経済的自立をめざす
現在のカレッジは、前身のNPOからニート支援部分を切り離し新たにNPO法人化たものです。主な収入はNPO会員の会費、企業などからの寄付金、受講生の月謝です。助成金を受ける場合、期間は1年のものがほとんどで対象となる助成金が少ないことが悩みです。支出は人件費、家賃に外部の講師料、フィールドワークの移動費などです。事業を安定的に継続するために、助成金や寄付だけに頼らない経営をめざしています。授業料収入を増やすことには限界がありますので、地道に賛助会員を増やすことと、講演会や研修講座の開催など新規事業も積極的に行っております。
<3h> 社会全体で支援する しくみが望ましい 3h>
今、栃木県でも1万人以上のニートの存在が言われており、『中高年ニート』は新たな社会問題です。この人数は将来的な生活保護者予備軍とも考えられます。この人たちが就労することにより、一人当たり1億円の税支出が軽減されるという調査報告もあります。ニートは家庭だけではなく社会全体の問題ととらえ、支援するしくみを作ることが急務です。
カレッジの体験プログラムは、「社会に出るうえで不足している経験のつみ重ね」を目標にしています。実際の会社で起こりそうなことをプログラムに組み込み、誠実に仕事をするとはどういうことかを教えたいのです。こうした体験型の施設は全国でも3、4ケ所しかありません。今後、栃木県内で複数の体験型支援施設が作られることが理想です。
就労まで半年、2年以上と通う期間はさまざまですが、孤立していた期間が長いほど復帰には時間がかかります。年齢が高くなればさらに困難になりますから、ご家族は一刻も早い対応が必要です。皆様にはカレッジの活動をご理解いただき、不安を抱えこまずご相談ください。私たちはひとりでも多くの立ち止まっているの若者に、人とかかわって生きる幸せを感じながら働いてほしいのです。