すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

有限会社 黒潮鮨

海のない、栃木県に「栃木の海」を創りたい 全国から届く活きのいい魚と輝くスタッフたち

取締役

小野 千恵

嫁ぎ先は平日も行列の人気店 サービスの違いにとまどいも

黒潮鮨本店は、昭和53年に先代が開業、昭和61年に会社組織になりました。もう40年近くも営業していることになりますね。先代は私の義父母になりますが、ユニークといいますか、なかなか有り難い商売の考え方、やり方を実践してきた人です。モットーが「儲けてはいけない」で、高い原価で徹底したお客様の笑顔を追求してきました。そうした姿勢は確実にお客様に伝わり、おかげさまでお店はたいへん繁盛しました。私が嫁いだ当時も、平日でも夜は多くのお客様に、席の空くのをお待ちいただいていました。

先代は1店舗を完璧にやるという方針で、旬の上等な素材をびっくりするような(安い)お値段をつけて提供していました。リピーターのお客様が多いことも自慢のひとつで、満足してお店を出て行かれるお客様を見ることで私たちも満ち足りた気持ちになったものです。平成になってお店や駐車場を広げたりもしました。大小さまざまなお部屋を用意しておりますので、冠婚葬祭や企業の宴会などにも幅広く利用していただいています。お客様のニーズを見極めることも、特に飲食業では重要なポイントですね。

私は神奈川生まれの東京育ち。都内の有名ホテルで営業の仕事をしていたときに和食の修業をしていた主人と出会い、栃木に嫁いで参りました。今ではすっかりこちらの生活に慣れましたが、最初はいろいろととまどいもありました。同じサービス業とはいえホテルの営業でしたから、やはり飲食業の皆さんからは、サービスの質が違って堅い対応に映っていたようです。そこは私自身も考えを改め、一から自分の立て直しを図りました。そんなこともいい思い出になっています。

ターゲットを変えた新店舗展開 栃木に海をつくりたい

もともと〝栃木の海 黒しお〟の名前には、「海のない栃木に海をつくりたい」という思いが込められています。6年前に主人が代表を引き継ぎまして、今まさしく、私たちの世代らしい経営をやっていこうとしているところです。先代の作りあげた黒潮鮨の暖簾を守るのと同時に私たちならではの取り組みも始めました。

そのひとつが、漁師さんから直接買い付ける仕入れです。現在の社長は夏場に1週間程度、スタッフと一緒に全国の漁場や市場を訪ねています。その場所に行き漁師さんに会って話をすれば、魚に対する知識も深まりますし、何より漁師さんたちの魚に対する思いを知り、その思いを新鮮な魚とともにお客様に伝えたいと思うようになるんです。漁師さんたちとの輪は年々広がり、今では信頼関係で結ばれた漁場は全国に広がっています。常にどこからか新鮮な魚介が届き、数が少ない物をまとめて「本日のおすすめ」などとして提供するので、お客様には喜んでいただいております。対馬のマグロや函館の活イカ、豊後水道のアジなど新鮮で贅沢な魚介類はこれからも増えそうです。

  そしてもうひとつが、ついに新店舗をオープンしたことです。新店は本店に比べカジュアルな雰囲気で、お席が全部で200席ありますので、お待たせすることなくご案内できます。オープン当時は本店と同じメニューでしたが、3年半がたちまして現在はお客様のニーズを見て変えているところです。新店にはセミナールームを設けたので、企業の会議、懇親会と流れでご利用いただくこともできます。本店と新店、お客様にはシチュエーションに合わせてお選びいただけるとうれしいですね。

夢、目標につながる仕事で お客様も、社員も幸せに

『四方良し』が当社の企業理念です。現在、18名の社員がおり、先代の頃から長く勤めてくれている方もいます。これから私たちはお客様や家族だけでなく、「社員の幸せ」を常に考えていきたい。近江の商人「三方よし」「買い手よし、売り手よし、世間良し、に当社では未来良し」を加えた「四方よし」の精神で、社員とともに夢や目標につながる仕事をしていきたいと考えております。

 接客や会社の仕事、子育てと忙しい毎日ですが私の息抜きは読書です。日本の歴史や神道に興味がありまして、神社や神話も大好きです。読んだ後に心がすっきりするような気がするんです。その流れなのか最近は着物が好きになりまして、少しずつですが集めているところです。

profile

東京都出身。東武ホテルレバント東京(墨田区)の営業 担当を経て、結婚を機会に栃木県に移り住む。黒潮鮨の 女将として本店(下川俣町)と西川田店を切り盛り。 趣味は読書。日本の歴史や神話、神道や神社にも興味が あり造詣が深い。最近は着物が好きになり集め始めたと ころ。家族は主人(黒潮鮨代表取締役社長)と長女。

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