すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

株式会社 オニックスジャパン

節句という昔からの習わし、豊かな食文化。 「日本の宝」を伝えていきたい

女将

大西 広美

豊かな出会いは 人生に深みを与えてくれる

「女将になっていなければ会えないような人にも会えたでしょう。人生180度違ってしまったかもしれないけれど、人生の最後、良かったと振り返ることができますよ。この店は宝です」。開店当初から懇意にしてくださっているお客様が、私にぽろっと語った言葉です。本当にその通りだと思います。豊かな出会いがありました。


ここで白寿のお祝いをしてくださったおじいちゃまがいました。いつも帰り際に「ここに来ると食が進むんです」と言葉をかけてくれました。しばらくお顔を見ないと思っていた時に親族の方から電話があり、そのおじいちゃまの法要の席の予約を受けました。「天毬で法要を」という遺言だったそうです。「ずっと、天毬の料理を食べたいんだ」と言ってくださっていたことを親族の方からお聞きしました。100歳を超えての大往生ですから、法要であっても〝お祝いの席〟なんですね。亡くなった後も、白寿の時と同じようにお祝いの席として天毬を選んでいただけたということにを感慨深いものがありました。


身体がご不自由の方のご家族から「年1回くらいしか外に連れていくことができないので、美味しいものを食べさせてあげたい」とのご要望があり、ここで食事会を開いてくださいました。涙を流しながら食事をしていたことが印象に残っています。


それぞれの思いを抱えながら来てくださるお客さまとの出会いに感謝の日々です。40歳を過ぎてからの女将への転身でしたが、涙あり、笑いあり、人生に深みを与えてくれるのが、このお店です。

苦労すれば それに見合った喜び

「天毬」という屋号には、「毬のように天からの恵みである食を皆様に手渡して広めていきたい」との想いを込めました。皆様に感動していただくためにはどうしたらいいのか、常に考えてきました。


美味しい料理、おもてなしの気持ちを込めた接客、お店のしつらえと環境、このうちの一つが欠けても天毬が存在する意義はありません。料理人は切磋琢磨してお店の環境に負けない料理を作り、接客は料理に負けないおもてなしの心を育て、お庭の木々の碧々とした環境がいつまでも続くように、部屋のしつらえにも手抜きをしないように心がけることが私たちの仕事だと思っています。


女将になるまでは主人の傘の下で仕事ができていた人生でした。このお店を持って初めて矢面に立ったという自覚が芽生え、すべてにおいて自分が責任をもってやらなければならないということを実感しました。仕事というものは、その責任に比例した喜びがあるのですね。重い責任と同時に、いろんな喜びをもたらしてくれます。楽したら、やはりそれだけの喜びしか手に入らない。苦労すれば、それに見合った喜びも成果も自分のものにすることができます。

日本を見つめ直し 今の仕事の大切さを感じて

 天毬は、節句の料理というものを大切にしています。桃の節句、端午の節句に七夕(笹の節句)、重陽(菊の節句)……。昔の人は一年の節目となる節日(節句)に神様に食物を供してきました。自分たちも飲めや食えやで、感謝の気持ちを表したり願い事をしたのが節句のお祝いだと思います。節句の習わし、日本の豊かな食文化を感じていただけるようなお店にしていきたいと思っています。


 端午の節句でしたら鯉のぼりに見立てたお料理。レンコンの風車に姫竹を割いて作った吹き流し、鯉に見立てた南蛮漬けの稚鮎。真蒸で作った矢羽根が卵の的を射抜く形を作ります。「見立ての料理」で一つのお皿の中に節句を表現します。お席に出した瞬間、「ワッー」って、お客様の顔が驚きと喜びの表情に変わります。


料理人が丹誠込めて作った料理に私自身が感動し、その思いをお伝えできればお客様の感動は2倍にも3倍にも膨らんでいきます。感動できるよう日々心を磨くというのでしょうか、そうしています。


私の楽しみは年1回の娘との海外旅行です。何処の国の方も自国のことを愛していることを強く感じますし、それは日本を見つめ直す機会になっています。例えば洋食のテーブルマナーは学校で習いますが和食のマナーは習わない。何でだろうと。日本の宝である和食の文化を伝えていかなければ、という思いを新たにしますし、いまの仕事の大切さを感じさせてくれるのです。

profile

プロ宇都宮市生まれ。昭和56 年、結婚を機に㈲大西製麺入社。大田原市(旧 黒羽町)に嫁ぐ。57 年、( 有) 大西製麺宇都宮営業所を簗瀬町に開設。宇 都宮市に移住。平成2年、㈱オニックスジャパン設立、取締役総務部長就任。 製造部門を( 有) 大西製麺、営業販売部門 は㈱オニックスジャパンとし て運営。15 年、オニックスジャパンに外食事業部を設け、宇都宮市一ノ沢 町に「三汁七菜 天毬」を開店。外食事業部長兼任。
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