すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

両毛印刷株式会社

新しい印刷会社のあり方を模索しながら 感謝の気持ちで仕事をしていくだけ

専務取締役

松本 和子

突然、専業主婦から 会社経営の現場へ立つことに

両毛印刷は明治32年(1878)に創業し、大正9年に会社を設立しました。以来、明治・大正・昭和・平成と、140年近くに及ぶ長い間、続いております。私がこの仕事に関わるようになったのは、この家に嫁いで3ヶ月ほど経った時のこと。会社の経理担当者が寿退社したことを受けて、その後任にと私に白羽の矢が立ったのです。大学で経済学を専攻していたとはいえ、実務経験はまったくのゼロ。会社勤めをしたこともなく、専業主婦でのんびりやろうと思っていたら青天の霹靂です(笑い)。そこで簿記やソロバンを一から学び直し、資格も取りました。未経験な上に仕事の現場では女性が少ないこともあって、随分苦労もしました。また、印刷技術の変遷もめまぐるしく、私が仕事を始めた頃は鉛で活字を作って印刷していた活版印刷が主でしたが、写真植字、オフセット印刷、さらにデジタル化によってオンデマンド印刷が始まり、電子出版と今も進化を続けています。時代の変化に対応し、常に両毛印刷も私も努力を続けてきました。

睡眠時間を削って 仕事・子育て・介護に没頭

私が仕事を始めてから直面した最大の危機はバブルがはじけた後のことです。印刷業界も過酷な価格競争の時代に突入し、それまで弊社は長い歴史のお陰で素晴らしいお客様に恵まれ、どちらかというと「待ちの営業」でした。しかしバブルがはじけ、そんな悠長なことは言っていられません。そこで新規のお客様の開拓に私も営業に出ることになりました。最初の1件だけご紹介をいただいて、誠心誠意仕事をこなすことで次の仕事に繋がり、お陰様でお客様の輪が広がって行きました。


しかし義母が脳血栓で寝たきりになったり、義父にガンが見つかったりと介護にも追われ、私もごく普通の人間ですので、お友達が食事会など楽しんでいる姿を見ると、「なんで私ばっかり」と思いました。人って極限まで追い込まれるとそこから逃げ出したいという気が働くのでしょうか。そんな中「私の分まで母や父が病気を代わってくれている。健康で介護できる方が幸せ」と気づいた時、すうっと不満が消えました。もちろん子育てもあります。1日は24時間しかありませんから、睡眠時間を削り、営業の合間に道路脇に車を停めて仮眠することもしばしば。子ども達にも淋しい思いをさせたと思いますが、接する時はとことん密な時間を過ごすように心がけ、15年近く仕事・子育て・介護に全力を傾けました。なんとか乗り切れたのは周りの人の支えがあったからこそ。頑張れと応援してくれる人、困っている時に手をさしのべてくれる人。そして義父の「ありがとう」という言葉にどんなに救われたことか。周りの人達に生かされ、感謝しかありません。


社員にも感謝です。以前、会社は街中にあったのですが、手狭になったこともあって、現在地へ引っ越しました。当時、徒歩通勤の人が多くて、その人達の通勤対策をどうしようと頭を悩ませ、バスでの送迎も考えたのですが、仕事のシフトなどを考えると無理。通えない人が辞めるのは仕方がないと腹をくくったのですが、誰一人辞めず、車を購入して通勤してくれました。また印刷関連・技術が変わるたびに社員の皆さんも勉強し対応してくれるなど、社員一丸となり盛り上げてくれたこと、本当に感謝しています。

AR(拡張現実)を活用して 情報発信の新しい形を提案

いま幣社の業務の7割近くがいわゆる紙媒体の印刷ですが、これからはWEBサイトの制作、インターネットを活用したマーケティング、電子ブック・広告制作などマルチメディア化をさらに進めていこうと考えています。その一つがARを駆使したPR。そして窓に特殊な印刷を施して、そこに動画(CMなど)「アド・マド あなたの窓は小劇場。休日でも営業しています」など、スマホと紙媒体を連動して身近な情報がより簡単に見やすく手に入るようにしたり、と。


015年11月にはフリーペーパー「TOCHICO日和」を創刊しました。これは、見知らぬ土地で心細い思いをしながら子育てしているママや、一人で孤軍奮闘しているママ達に役立つ情報を送りたいと思って始めたものです。「子育てしやすい街、栃木」の実現のため、やはり子育て中の現社長夫人の責任編集により発行。ここにもAR技術を導入し、マルチメディアを具体化しています。


その一方で伝統文化、地域資源を守ることにも注視し、渡良瀬遊水地に生えている葦を利用した和紙を商品化。この「ヨシ紙」を使って名刺やメッセージカードなどを作っています。今後は照明器具や住宅資材などにも活用できるようにしていきたいと思っています。新しい印刷会社のあり方を模索し、未来を見据えたさまざまな創造提案をしていきたいですね。

profile

栃木市出身。東京経済大学卒業。 結婚後、嫁ぎ先の家業である両毛 印刷株式会社の仕事に携わるよう になり、現在に至る。2児の母。 趣味はゴルフと俳句や詩をしたた めること。

両毛印刷株式会社