すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

栃木ソーシャルサービス株式会社 / 株式会社 こころ

こころの病に苦しむ人たちの生活をサポート 自分らしく輝ける人生のお手伝いを

代表取締役

粕尾 薫

12年間の病院勤務を経て知ったこころの病の現状

精神疾患を持っている方々の社会復帰をサポートするため、訪問看護や就労支援の会社を設立して6年目になります。会社を立ち上げる前は看護師として病院に勤めていました。12年間に渡る病院勤務ではいろんな科で経験を積みましたが、看護師である私は当然ながら病院は〝治療する場所〟であり、退院こそが患者さんのゴールだと考えていました。けれど精神科病棟に配属されたとき、退院=ゴールではない現実を目の当たりにしたのです。 

いつものように退院される方に「具合が悪くなったと思ったらすぐ受診してくださいね」と声をかけた時のことでした。「具合が悪い時は病院に来られないんです」という言葉が返ってきたのに大きな衝撃を受けたのです。そこで初めて患者さんの退院後の生活について考えるようになりました。あるうつ病の女性は「うつが良くなっても、家族もいないし退院しても帰る家もない。死ぬまでここにいるしかないんです」と私に心の内を打ち明けてくれました。こころの病は〝退院すれば終わり〟という簡単なものではなかったのです。生活していく上で家族や周りのサポートは必要不可欠。そして退院後のベストな状態を維持し続けることが、患者さんにとって大きな壁だということを初めて知ったのです。

日々の生活を支援するため 会社設立を決意

入院生活は、一見快適で最高の環境が整えられているかもしれません。しかしそれは本当に患者さんが望んでいる幸せでしょうか。社会で生きていくには失敗や困難はあるかもしれない。でもそれ以上に、達成感・仲間との出会い・笑いなどたくさんの楽しみがあります。患者さんたちにも好きなものを食べたり、いろんな場所に出かけたり、たった一度きりの人生を好きなことをして過ごして欲しいと考えるようになりました。

日本の精神科病棟には、症状が良くなっていてもサポートが足りずに退院することができない「社会的入院」をされている方が6 万人〜 7 万人いると言われています。けれど何かしらの在宅の支援があれば普通の生活に戻れる方は7 万2 千人。その事実を知り「特に人より秀でた能力もない自分にできることがあるのだろうか…」と途方に暮れましたが、今まで経験してきた看護を通して「生活していくこと」を支援することはできるのではないかと思い、平成23 年に株式会社を設立しました。その3 ヵ月後に訪問看護ステーションこころを設立し、障害をお持ちの方々の就労継続支援事業所、相談支援センター、ヘルパーステーションを立ち上げました。設立して半年間は、なかなか周りに理解されず利用者がこない状況が続いていました。けれど新聞に掲載して頂いたのがキッカケで利用者が増え、現在では精神疾患の方以外にも生まれつきの難病で悩んでいる方、経済的に困っている方の相談も受け入れ、必要に応じて行政などと連携しながら支援を進めています。 

うつ病をはじめとしたこころの病は「悪いことをしたからなる」というものではありません。原因は内科や外科と同じ。でも病気を診断された時、仕事も結婚もすべて諦めなければいけないと絶望感を感じる方がほとんどです。その方たちをサポートしていくためにも、今後は潜在看護師の方々が病院の中だけではなく地域で活躍できる場を作っていきたいと考えています。また所属している日本精神科看護協会での活動を通して、学校教育等で心についての教育も取り入れていきたいです。

「面白かった!」と思える 人生のサポートを

私が起業して誰かをサポートしたいと考えるようになったのは、子育てを経験したからなんです。子どもと生活することで「みんな誰かの大切な子どもなんだ」と実感しました。看護師、育児、いろんな経験が今の自分に繋がっていますね。子どもたちの成長一つひとつが私にとって大きな喜びです。最近では感動をもらうことも多々あり、「子どもに負けずに頑張るぞ」と仕事の原動力になっています。また辛いときには、小さい頃に祖母と二人で「最期は『この人生、いろいろあったけど面白かったな』と思いたいね」と話していたことを思い出しては励まされています。利用者の方にも「面白い人生だった」と思ってもらえるようにサポートを続けていきたいです。

profile

1974 年福島県福島市生まれ。 3歳から宇都宮市へ移り住む。 看護学校卒業後に結婚。現在は 壬生町在住。夫・長女・次女の 4人家族。