すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

フルーティスト

豊かに響き合うフェミニンでエレガントな感性を大切に

山形 由美

大きな手応えを感じた30周年

 私は昨年、フルート奏者としてデビュー30年の節目を迎えることができました。記念CDを発表。また、パリ公演を成功裡に終えることができ感無量です。このように長くフルーティストとして活動できたことには本当に感謝しています。応援してくださった皆様には、この紙面を借りてお礼を申し上げたいと思います。

4才からピアノ、ヴァイオリンを始めましたが、フルートを習い始めたのは中学3年のとき。以来長い間フルートを吹き続けてきましたが、私にとってフルートとは、生きることそのもの。フルートという楽器は、息を使って音を出すため、奏でる人によって音がまったく違います。楽器に息(イキ)を吹き込むことは「生き(イキ)」を、そして「命」を吹き込むこと。楽器を通して自分の声を発しているようなもので、他の誰のものではない自分だけの音を作っていく喜びがあるのです。

天に通じる音とも言われるフルートの音色。その魅力を多くの方に伝えるためさまざまな活動を続けています。国内外のコンサートに出演するのはもちろん、セルフプロデュースによるCD制作やチャリティーコンサートも行っています。

2015年3月に東京・白金で開催した東日本大震災のチャリティーコンサートでは、チラシの制作からやお持ち帰りいただくお土産も自分の目で選びました。被災地の女性たちが作った、かわいらしい手編みのエコたわしが、作って下さった方と共に、来て下さった方たちの心も明るく照らしてくれたらと考えました。

自分の覚悟で切り開ける道

 また、2005年に、CD「ルーチェ〜ヴェネツィアの光と夢」で初のセルフプロデュースに挑戦したときは、一つの壁を乗り越えたと感じました。収録会場である教会の選定、共演者や現地スタッフの契約など、それまではプロデューサーにお任せしていた業務をイタリアで自ら行い、それによって、それまでのCD制作や演奏活動で、いかに多くの人に支えられてきたのかを、実感しました。もし、敷かれたレールの上で演奏だけを行っていたらそこまで大きな感慨や感謝の気持ちは生まれなかったかもしれません。私にとっては大変貴重な経験となりました。自分が背負えるものであれば、覚悟を決めてチャレンジしてみることは大切だと感じました。その上、自作したことでヨーロッパのレーベルからCDを発売するという大きなおまけもつき、うれしい限りです。

その年、尚美学園大学の客員教授に就任いたしました。今までも公開レッスンや講座などでフルートの指導は多々行ってきましたが、新たなフィールドで若い世代へ経験を伝えられることは大きな喜びです。若い方から多くのことを吸収しながら、私の持てる力の限りを伝授していきたいと希望に燃えています。

女性としての自分を大切に

舞台を降りたオフの時間は心穏やかに過ごすとき。那須やハワイでゴルフを楽しむこともありますが、ガーデニングやインテリア、お菓子づくりなど手仕事も大好きです。また、子どもの頃に習っていたバレエを再び始めました。大好きな音楽と共に踊ることは至上の喜びです。

 さらに、2013年に結婚し、家族のために料理をする喜びも得ることができました。夫は本業の傍ら、母と歌のサロンを主宰する音楽好き。先日のチャリティーコンサートでも、プロはだしの歌で共演してもらいました。

 今回出版される本は、多様な職種の専門家である女性の方々が登場されるとのこと。男性社会の中でがんばって来られた方も多いと思います。男勝りのガッツで進んでこられた方、またあえて女性らしさを出さずに活動されてきた方もおいでかもしれません。でしたらなおのこと、プライベートでは自分の中の女性度を大切になさってみてはいかがでしょうか。仕事でスーツが多ければ休日はフェミニンな色彩やデザインの服装をしてみるなど、自分の中の女性の部分を失わないように再確認し、女性ならではの感性をさらに研ぎ澄ませて、エレガントで有能な女性としていつまでも輝いて欲しいと願っています。

profile

東京藝術大学卒業。英国留学を経てデビュー。以来2000 回を 超える公演、NHK「連想ゲーム」、TBS「サンデーモーニング」 等のTVやラジオ出演、講演、執筆等の活動を通じフルートに 対する人々の関心を広く集め、愛好者を増やしてきた。デビュー 30 周年を迎えた2016 年には、セルフプロデュースによる記念 CD の発表、記念ツアーを行なう。パリ公演が大成功を納め、CD「エ ターナリー〜永遠のジゼル〜」 が、レコード芸術特選盤に選ばれ るなど、アーティストとして高い評価を得ている。尚美学園大 学客員教授 https://www.yumi-yamagata.com/