すみれ会

すみれ会 栃木県女性経営者100人

画家

「絵を描くこと」は、生きる上で欠かせないもの 諦めずに続けていくことが大きな力に繋がる

アトリエ松江 主宰

松江 比佐子

絵が好きな幼少時代から 自然な流れで画家の道へ

小さい頃から絵を描くのが大好きで、本格的に習い始めたのは小学1年生の時でした。大勢で遊ぶよりも、どちらかといえば一人で本を読んだりするのが好きな子どもだったので、絵を描くことは性格的にも合っていたのだと思います。両親もその姿を見ていたからか、小さい頃はよく東京の美術館に連れて行ってくれました。絵画教室は小学6年生まで続け、その後も先生のアトリエで時々絵を描かせていただき、さらに美術短大では油絵、デッサンを学び、短大を卒業してから日本画、版画に興味を持ち始めました。そしてデザイン事務所に入り、グラフィックデザインなどの仕事と両立しながら個展を開き、平成5年に「アトリエ松江」を立ち上げ定期的に作品づくりを行っています。現在は創作活動のほかに、読売・日本テレビ文化センター講師として色えんぴつ画を教えるなど、幅広く活動させていただいています。


好きなことで仕事をしていく、ましてや芸術で食べていくことは根気のいることでしたが、今まで絵を辞めるという選択肢はありませんでした。絵は私にとって生きる上で欠かせないもの。産みの苦しみはありますが、どんなにしんどくても、また必ず描きたくなるのです。長年活動していることでアーティスト仲間も増え、その方たちの作品や真摯に創作活動に打ち込んでいる姿を見ることも励みになっています。

ボランティア活動や 災害が人生の転機に

創作活動の傍ら「宇都宮子ども劇場」で活動していたご縁で、平成18年から「NPO法人チャイルドラインとちぎ」の理事長を務めるようになりました。チャイルドラインは、18歳までの子どもを対象とした電話による傾聴ボランティア活動です。子どもたちの悩みに触れることで、一人ひとりが持つパワーの偉大さをヒシヒシと感じています。今の子どもたちに幸せな未来を残せるかという不安もありますが、子どもたちが自分自身の力に気付き、彼らを勇気づけられるような作品を作っていきたいです。


平成23年の東日本大震災では、「チャイルドラインみやぎ」の仲間からの発信もあり、被災地に何度か足を運びました。津波の傷跡を目の当たりにした時の衝撃は、今でも忘れられません。その記憶を頼りに描いた50号の大きさの水墨画が、自分にとっては初めて和紙に大きく描いた水墨画の作品になりました。絵画ではいろんな技法がありますが、津波の後のすさまじく、痛ましい様子を描くのに自然に墨を選んでいました。その作品が現代水墨画協会の公募「現水展」で入選し、さらに新人賞をいただきました。そのご縁で現水展に参加することとなり、2016年現水春季展では「コロッセオ」という作品で優秀賞をいただきました。芸術家は自分のスタイルを貫くことも大切ですが、私はご依頼いただいたものは基本的にすべて受けるようにしています。これまでの経験を踏まえて、そこから新しい可能性が開けると感じています。

何事も無駄なことはなく 精一杯生きることが実を結ぶ

 続けていくことは力になります。もちろん生まれ持ったセンスはありますが、続けることで高みに繋がり、大きな力を発揮するのだと思います。私の好きな言葉に、宗教改革者であるマルティン・ルターの「たとえ明日世界が滅ぶとしても、私はリンゴの木を植えるだろう」という言葉があります。この言葉のように、人生に無駄なことは一つもなく、自分に託された仕事を精一杯やるだけなのだと思います。「棚からぼた餅」という言葉も好きですね。楽をして幸運を得る意味に思えますが、それまで積み重ねてきたものがあるからこそ奇跡は起こるのだと思います。そして苦しい時には〝辛いのは自分だけではない〟と客観的にその事実をとらえ、思い込みすぎないように心掛けています。


女性経営者の方々は華やかな部分が取り沙汰されることが多いと思いますが、その陰にはいろんなご苦労があるかと思います。苦労している姿を見せないのも経営者としての在り方だと思いますが、決して一人で抱え込まないでいただきたいです。女性ならではのしなやかさであったり、繊細さであったり、男性経営者には真似できない魅力を活かして輝いてほしいですね。私もそのお姿を拝見することで勇気づけられます。これからも、それぞれの分野で力を発揮している女性経営者の皆さんを応援しています。

profile

宇都宮市出身。武蔵野美術短期大学美術科油絵専攻卒業。平成 5 年から自身が主宰するアトリエ松江で創作活動を行う。平成7 年から読売・日本テレビ文化センター講師を務める。平成23 年 に第50 回現代水墨画展で入賞( 新人賞)。平成28 年に現水春季 展で優秀賞。平成18 年NPO 法人チャイルドラインとちぎ理事 長就任。平成22 年から宇都宮市教育委員を務める。